ラン (森絵都)

  • 2008/07/21(月) 00:00:20




(本の内容)

走らなくちゃ…一歩でも前に進むために――
もしもあの時こうしていたら…環の心は、突然家族が亡くなったあの日から止まってしまっていた。もう一度家族に会いたい。ある日、自転車を走らせたその先に待っていたものとは?
出会いと別れ、誰の人生にも必ずついてくる喜びと悲しみ。
せつなさとあたたかさ溢れる森絵都ワールド。

確か「DIVE」の文庫解説だったと思います。
森絵都さんが次回作執筆のためにマラソンを完走したという話がありました。
森さんの次回作は本格的マラソン小説なのかと想像しました。

そして、もう一つ___あの名作「カラフル」と何らかの繋がりがあるのではないか
という話がありました。

「人生はマラソンだ」という言葉があったような気がします。
何度も転び、途中でコースを誤ったり、苦しくても何とかゴールに辿りつくその姿は
人生そのものです。
この物語にはその言葉がピッタリはまりました。
「ラン」は想像したような本格的マラソン小説ではありませんでした。
主人公である環は成り行きでマラソンに挑戦はしますが、あくまでタイトルは「ラン」なのです。
(これ以上細かく書いたらネタバレになってしまうのでよしておきます)

13歳で自分以外の家族全員を喪い、20歳で頼りにしていた唯一の身内である叔母も喪った環。それ以来、天涯孤独の生活を送っていました。生活のために仕事はしていますが、職場でも
独りぼっちでした。
やがて、環と同じように家族を喪った自転車屋の紺野と出会います。
同じ境遇である紺野と次第に打ち解けますが、別れがやってきます。
別れの際、環は紺野から自分の息子の形見であった自転車を託されます。
そしてある日、何もかもいやになった環はその自転車に跨り、一心不乱にペダルを
漕いだらそこは___

ある意味「カラフル」と共通する物語でした。しかし「カラフル」と(たぶん)物語的なつながりは
なかったと思います。
前半はとにかく頑なな環の姿にどうも乗り切れませんでした。
ある登場人物が「まじめに生きようとせずに、いつまでも死んだ家族にしがみついて甘えてる」と言い放つのですが、まさにその通りでたとえ同情の余地はあってもこれで最後まで読めるのか不安になってしまいました。

その流れが一変したのは、ドコロさんが登場したあたりからでした。
半ば強引にドコロさんが主催するランニングクラブに入会させられた環は、ある目的のために
利用します。
「いいわねえ」が口癖の真知栄子(なぜ彼女だけフルネームだったのだろう? だけどこれが環の彼女に抱く嫌悪感がよく分かる)など個性的な(だけどそれぞれには人には言えない事情を
それぞれが抱えています)人物がクラブにいますが、特に"むっつり熱血"である大島君の
存在感が増すごとに読んでいて心地よくなってきました。
ドコロさんがランニングクラブを作る経緯である雑誌「イージー・ラン」に載ること___なぜ、
ドコロさんは頑なに拘るのかなど気になる話題で飽きさせません。
読後感もなかなかよく爽やかな小説でした。

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この記事に対するコメント

カラフルのプラプラが出てきたら面白かったのに。
そしたら前半はもっと盛り上がったかも。
なんて偉そうに構成を考えてみた(笑)

>しんちゃん
発売前にあそこまで「カラフル」を意識させられていたから、どこかに「プラプラ」が出ていないかと話の本筋よりそっちが気になってしまいました(苦笑)。
前半はアレでしたが、後半は本当に面白かったですね。

こんばんは。
読後の満足感十分でした。
真知栄子、強烈でしたね。
ドコロさんが突然陸上界から消えた謎、
ちょっとミステリタッチで楽しめました。

>藍色さん
ボリュームも内容も満足感が十分ありました。
ドコロさんの謎はもうすこしセコい謎かなと侮っていました(笑)。

へえ。森さん、マラソン完走されたんですね。それはすごい。
じゃあ、環がだんだん走れるようになる、あのへんはご自分の経験もいっぱい入ってるんでしょうねえ。

私も最初の方は苦労して読みましたが、環が走り始めたころから乗ってきました。
これもドコロさんはじめイージーランナーズのおかげ?

>ちきちきさん
森さんご自身の経験がとてもよく生かされていたと思います。
初めの頃の重苦しさ、そして環を好きになれず自分も苦労しましたが、
イージーランナーズの面々のおかげで楽しめて読めました。

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